月の表面には、クレーターという隕石(いんせき)の衝突(しょうとつ)でできた円いくぼみがたくさんあります。多くのクレーターには名前があり、主には有名な学者の名前が付いています。それでは、月を見たとき、特に目に付くクレーターをいくつか紹介(しょうかい)しましょう。
月の南半球、つまり私(わたし)たちから見るとおおむね下側に、ティコという天文学者の名前のクレーターがあります。そこからは隕石がぶつかったときにできた光条(こうじょう)という筋(すじ)が放射状(ほうしゃじょう)に非(ひ)常(じょう)に長く延(の)びているため、ティコは周りに多数のクレーターがある中でも目立っています。
中ほどには、やはり天文学者の名前を取ったコペルニクスがあります。このクレーターは海の中にぽつんとあるため目を引きます。なお、海とは、月の上では黒っぽい平地を指すもので、地球の海のように水はありません。
北側、すなわち上の方に、楕円形(だえんけい)に見えるプラトンは、古代ギリシャの哲学者(てつがくしゃ)の名前。本当は円形なのですが、月の縁(ふち)に近いためひしゃげて見えています。クレーターの中に薄黒(うすぐろ)い溶岩(ようがん)がたまって平らになっているところが特徴(とくちょう)です。
これら三つのクレーターは、直径が100キロ前後で、望遠鏡(ぼうえんきょう)でなくても双眼鏡(そうがんきょう)で分かります。半月から少し太った形のころによく見え、今月だと29日から31日が見ごろです。
(島根県立三瓶(さんべ)自然館サヒメル天文事業室長・竹内幹蔵(みきまさ))=隔週掲載(かくしゅうけいさい)=