星空の中に、半円形になって目を引く、七つの星の並(なら)びがあります。それは6月半ばの午後9時ごろなら、頭の真上あたりに見えています。近くにあるうしかい座(ざ)のアークトゥルスという、たいへん明るい星を手がかりに探(さが)すこともできます。
星座としてのこの星の並びは、かんむり座といい、ギリシャ神話では、神様からある王女に贈(おく)られた冠(かんむり)が天に昇(のぼ)ったものだとされています。その中で最も明るい星アルフェッカは、宝石(ほうせき)を意味するゲンマという別名を持ち、冠を美しく飾(かざ)っています。
かんむり座の形は、昔の日本ではいろいろなものに見立てられました。かまどを意味する「クド星」や、太鼓(たいこ)の皮を胴(どう)に止めるびょうのようなので「タイコ星」、車輪に見えるから「クルマ星」などと呼(よ)ばれていたそうです。浜田(はまだ)市では「節句(せっく)の切り餅(もち)」に例えられていたという記録もあります。
星の結び方は自由なはずなのに、西洋でも日本でも同じ形に星が結ばれていたのは、かんむり座の星の並びがよほど特徴的(とくちょうてき)だからなのでしょう。
とにかく、一度見つけてしまうと、忘(わす)れられない星座です。ただ、明るい星が少ないため、月の出ていない夜に見るのをおすすめします。今月中(ちゅう)旬(じゅん)は月明かりの影響(えいきょう)がないので、晴れたら探してみましょう。
(島根県立三瓶(さんべ)自然館サヒメル天文事業室長・竹内幹蔵(みきまさ))=隔週掲載(かくしゅうけいさい)=