月全体が太陽に照(て)らされて、円(まる)く明るく光る満月(まんげつ)。そうなるのは、月が地球から見て太陽の反対側に来たときです。このため満月の見える時刻(じこく)や高さは、太陽とはまるで正反対になっています。
まず、太陽は正午ごろに南の空に見えますが、満月が南に見えるのは真夜中です。また、太陽は夏至(げし)のころ最も空の高いところに昇(のぼ)りますが、満月は冬至(とうじ)のころに最も高くなります。逆(ぎゃく)に、夏至に近い今ごろの満月は、南の空にやって来たときでも低くにしか見えません。
このように、夏の満月はいつも低いのですが、地球を回る月の通り道の傾(かたむ)きが変化するため、その「低さ」も実は毎年少しずつ変わります。天体が真南に差しかかることを南中(なんちゅう)といい、夏至のころの満月が南中する高さは、近年だと2015年ごろが最高で、2024年ごろには最も低くなります。
つまり、ここ数年の夏は、もともと低い満月が、さらに低く見えるのです。図は三瓶(さんべ)自然館サヒメルから見た、夏至近くの満月が南中しているところです。8年前も三瓶山の上の低い位置に見えてはいますが、今年だと山頂(さんちょう)のすぐ近くに見えることが分かります。
今年の夏至は6月21日でした。それに最も近い満月は7月3日から4日にかけての夜です。そのころの晴れた夜更(よふ)けに月を見てみましょう。
(島根県立三瓶自然館サヒメル天文事業室長・竹内幹蔵(みきまさ))=隔週掲載(かくしゅうけいさい)