日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止めを求めて茨城県など9都県の住民が起こした訴訟で、水戸地裁は「実現可能な避難計画や防災体制が整えられているというにはほど遠い」として運転を認めない判決を下した。

 地震や津波の想定や建物の耐震性が適切かなども問われた訴訟だが、判決は安全性を巡る争点で事業者の原電の主張を認める一方、事故時の避難計画の不備に理由を絞って運転を禁ずる判断を示した。重大事故に備え、自治体が策定する避難計画の実効性は多くの原発で論議の的になっている。判決を、避難計画の実行は本当に可能なのか、全国で総点検する契機としたい。

 原発の安全対策で国際基準となっている考え方は計5層の「深層防護」だ。第1~3層が故障の防止や事故の被害低減、第4層が炉心溶融(メルトダウン)などの重大事故対策だ。現在ここまでは電力会社が対策を立て原子力規制委員会が審査する。第4層が破られ、原発から大量に放射性物質が漏れた場合、第5層の避難計画が発動される。

 東京電力福島第1原発事故まで、第4層の重大事故対策は電力会社任せだった。その反省から欧米のように規制対象にすることになり、新規制基準が定められた。だが、第5層の避難計画は、規制委の審査対象でなく、自治体任せだ。責任の所在が曖昧で制度的欠陥だとの批判もあり、避難計画の実効性を確保する仕組みを考える必要がある。

 東海村は日本で初めて研究炉の臨界や商業炉の運転を達成した原子力開発の拠点だ。核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)臨界事故という深刻な被ばく事故も経験した。

 3年前、東海第2原発の再稼働について事前了解の対象を県と東海村だけでなく、水戸市など周辺5市にも広げた全国初の安全協定を締結。県と立地自治体の同意だけで再稼働できる従来の在り方でいいのか問題提起した形になった。

 東海第2原発は避難対象となる30キロ圏の人口が約94万人と全国最多で、避難計画策定が難航している。30キロ圏内の14自治体のうち9自治体は未策定だ。今回の判決の効力は確定するまで生じないが、再稼働のハードルは一層高くなった。

 この判決と同じ日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じた昨年1月の広島高裁の仮処分決定を不服とした四国電の申し立てによる異議審で、広島高裁が異議を認め運転を認める決定をした。伊方3号機については、差し止めの仮処分決定がこれまで2回出され、いずれも翻されるという異例の展開となった。

 福島第1原発事故後、司法判断が二転三転することが増えた。事故前の裁判所は、科学的論争への深入りを避け、形式的な合法性の判断にとどめる傾向が強く、住民側の敗訴が続いていたが、近年は一変した。福島の事故の深刻さを受け止めた結果だろう。訴訟リスクの面でも、安定電源とされてきた原発の安定性が揺らいでいる。

 政府の現行のエネルギー基本計画は、電源に占める原発の割合を2030年度に20~22%にする目標を掲げるが、19年度は6%(速報値)にとどまった。今夏といわれる計画改定に向け、原発をどう位置づけるのか国民的な議論が必要だ。