2年前、漫画が原作の人気ドラマ『孤独のグルメ』に鳥取市が登場した。取り上げられたのは、旧市役所の食堂で評判だった「スラーメン」と古びた鉄板焼き屋の「ホルモンそば」。ともに庶民的で、市民にはなじみのソウルフードだ▼ホルモンそばはスタッフが10軒を食べ歩き、味はもちろん、雰囲気も含めて店を決めた。「スタッフのこだわりは相当なもの」と原作者の久住昌之さん▼ただ、こだわりは久住さんが一枚上。先週、全日本広告連盟山陰大会に参加するため松江市を訪れると、1人で気になる店を探し、1万歩も歩いたという。「ごちそうではないが、地元の人が繰り返し食べに行ってしまう店に、本当にうまいものがある」▼山陰大会では「A級グルメ」の仕掛け人として知られる島根県邑南町の寺本英仁商工観光課長も登壇した。量や経費を考えると、地元の食材を大消費地・東京へ売り込むことに限界を感じ、都会の人に自慢の食材を邑南で味わってもらおうと発想を転換。地元に足りない料理人の育成に力を注いだ結果、20軒だった町内の飲食店は50軒に増えた▼2人の話に共通するのは、ホルモンそばにせよ、新鮮な食材にせよ、地元住民にとって「当たり前」のものこそ宝物で、よそから来た人には魅力的ということ。コロナ禍で県外からの来客はしばらく望めないが、収束後に備えて、宝物の〝味付け〟に磨きをかけたい。(健)