近年、よく「2040年問題」が指摘される。第2次ベビーブームだった団塊ジュニア世代が65歳以上になるのに伴い、高齢者人口がピークを迎え、労働力人口の大幅な減少が見込まれるためだ▼少しだけ想像力を働かせると、早くから予測できたはずだが、見たくない未来は知りたくないし、対応が決まるまで知らせない方がいいとの心理も働く▼同じような高齢化問題が原発にも迫っている。現在、国内の原発は建設中の島根3号機など3基を除くと33基。うち2000年以降の運転開始は5基だけで、40年までには残る28基が、さらに脱炭素社会実現の目標年である50年までには既設原発は全て「40年定年」に達する▼原則通り全てを廃炉にすれば原子力発電の電源比率20~22%は不可能。さらに放射性廃棄物の最終処分地が決まらない中、廃炉を待つ原発が今の24基から倍増。核燃料サイクルも見直しを迫られる。そこで浮上しそうなのが、当初は「例外」扱いだった最長60年への「定年延長」。先日、福井県が先陣を切って3基の延長稼働に同意した▼ただ、原子力規制委員会は「厳しい事故が起きた場合、古い炉は対応が難しくなる」と念を押す。脱炭素化の実現を、定年を延長して「高齢原発」に頼るのか、それとも40年定年のまま廃炉ラッシュに進むのか。原子力政策の岐路だが、時間がたてばたつほど、国民に選択の余地はなくなる。(己)