開幕まで2カ月足らずに迫った東京五輪・パラリンピックで、観客を入れるのか否かの判断が注目されている▼現実味を帯びている「無観客開催」となった場合、選手はどう力を発揮するのか。マスコミ各社の世論調査では、コロナ禍で開催自体を望まない国民も相当数いる。選手の重圧は計り知れないだろう▼2005年6月のサッカー・ワールドカップ(W杯)アジア予選で、日本代表が本戦出場を決めた北朝鮮戦は無観客で行われた。本紙1面コラム「羅針盤」の執筆者で、W杯で数々の名勝負を実況してきた元NHKアナウンサーの山本浩さん(松江市出身)に、選手にとっての無観客での難しさを尋ねると、こんな答えが返ってきた。「サポーターは選手に集中力を持たせる存在。それがいないなら、自分たちのプライドや意志で集中力を保たないといけない」▼「勝つ」とは、相手を超えるというだけでない。自らの高みを示し、これまでの自分を超越する意味だとも教わった。今回の五輪・パラリンピックは試合結果やメダルの数以外に、選手の精神力の強さを見るような大会になるのではないか▼翻って応援する側も、会場で声援を送ることができないとすれば、どういう心持ちで臨めばいいのだろうか。いまだに開催の賛否が分かれるが、選手の肩身が狭くなるような言動はいただけない。自らを超えようと戦う選手にエールを送りたい。(万)