益田市横田町の助産師、中島春奈さん(34)は「めばえの森」代表として、島根県西部を中心に各地の学校に出向いて性教育講座や生理について語る場を開き、児童生徒の悩みに答えている。目指すのは「自分らしく生きる」ことのサポートだ。
「自分の心の信号は何色ですか?」。小中高校の講演で子どもたちに問いかける。つらいのに無理し続けると病気になってしまう。しんどいときは周囲に助けを求めること、友達の赤信号にも気を配ることを説く。
性教育講座は、人間関係や健康など幅広いテーマを含む「包括的性教育」を実践。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が年齢ごとにカリキュラムを決めており、多くの国がそれを基に性教育を進めるが、日本の性教育は「性交」を扱わないなど不十分だと感じる。先生からは伝えにくいが、「自分を守る上で知っておくべきだと思う」内容を専門家の立場から説明している。
中島さんは奈良県出身。大学在学中に無月経など生理不順に悩まされた。卒業後、滋賀県内の小児科で看護師として働き、女性の健康について専門的に学ぼうと26歳の時に島根県立大別科助産学専攻科に入り、助産師資格を得た。卒業後は江津市内の病院に勤め、28歳で「めばえの森」を始めた。「もともと独立の思いはあった。江津市の起業支援の力に支えられた」と振り返る。
学校を訪ねると、友人関係や生理、性行為についての悩みをよく耳にする。生理不順は放置すると不妊につながる恐れもあるが、全体授業では十分な情報が与えられず、生理痛も当たり前だと我慢してしまう生徒も。そんな姿を見てきて「児童生徒に正しい情報を伝えたい。相談しやすい関係を築きたい」との思いを強くしている。
講義形式ではプライベートなことを伝えるのは難しい。対話を通して、その人に本当に必要な情報を届けるため、個別に相談できる場を学校や地域に増やしていくのがこれからの目標だ。(坂上晴香)
………………………………
出張講義などの申し込みは中島さんのメールharu.mw.na@gmail.comへ。