都市部を中心に子育て家族が1~3週間、地方に滞在し、親がリモートワークなどをしながら子どもを地域の保育園に預ける「保育園留学」が注目を集めている▼地方創生に関する事業を展開する東京都の企業が、2021年11月に北海道厚沢部町で開始。約1年半で受け入れ先は11道県18地域に拡大した▼世界遺産・石見銀山遺跡のある大田市大森町でも本年度スタートした。豊かな自然環境に触れることができ、住民約400人の町全体で子どもを見守るのが売り。4月にモニター体験した東京都世田谷区の会社員女性(30)は「都内ではベビーカーで出かけることも多かったが、園で散歩に連れて行ってもらい、長距離も歩けると気付いた」と、2歳の長男の成長を実感した▼2日に発表された厚生労働省の22年人口動態統計で、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は1・26と、05年と並び過去最低となった。1・57の島根は都道府県別で4位なのに対し、東京は1・04で最下位。東京一極集中が全体の出生率を押し下げている▼都会から伸び伸びと子育てできる地方へ一時的に移り住み、その後の関係人口や将来的な定住につなげる―。流れが加速すれば少子化対策にもなるだろう。ただ政府の「次元の異なる少子化対策」の方針には、東京一極集中是正に向けた目立った支援策はない。財源ばかりではなく中身も問われる。(吏)