大田市の三瓶山北の原で30日に開かれる第71回全国植樹祭に特別な思いで臨む女性がいる。市内で生花店を営む福間君枝さん(60)。ステージ4の乳がんと闘いながらコーラスグループで練習を続け、式典会場で熱唱する大役が決まっていた。新型コロナウイルスの影響で事前に録音した歌を会場で流すことになったものの、病気で沈んだ自らを癒やし、支えてくれた大自然に、声がこだまする。(錦織拓郎)
病を知らされたのは、50歳の時だった。がんの転移も見つかり、手術と投薬治療を強いられた。
「なんで自分が」。不安とつらさにさいなまれる身を支えたのが、40歳の時から続けていたコーラスグループ「花音(かのん)」での活動と、なりわいとしても長年付き合ってきた植物だ。
今から思うと、コーラスで体全体の筋肉を使うのが「健康につながったと思う」と笑う。抗がん剤の影響で頭髪が抜けた頭をウィッグで隠して全国大会の舞台に立ったこともある。
もう一つが、四季の花々や草木。「リラックス効果がある自分にとって本当に大きな存在」と話す。
そんな中、舞い込んできた全国植樹祭への参加の知らせ。結局、コロナで1年の延期が告げられ、さらにその後、式典の規模縮小も決定。グループが会場で披露するはずだった大会歌や県民歌は、雨天会場用に収録していた音源を流すこととなった。
それでも「闘病の身でこうした機会を得られたのはうれしい」と、緑の祭典に携われたことに喜びを見いだす。
コロナ禍の中、最近は若年層が来店し、観葉植物や花々を買い求める姿が目立つようになったという。心身にストレスが及ぶ社会で植物の癒やしの効果が見直されていると感じる。植樹祭を通じて「緑や自然への思いが、地域で高まればいい」と話す。