タブレット端末で画像生成AIを使い、理想の絵作りに取り組む子ども。文部科学省は生成AIの小中高校向けの指針をまとめた=東京都内
タブレット端末で画像生成AIを使い、理想の絵作りに取り組む子ども。文部科学省は生成AIの小中高校向けの指針をまとめた=東京都内

 人工知能(AI)を教育にどう生かし、何に気を付けるべきか―。文章を自動で作成する「チャットGPT」に代表される生成AIの小中高校向け指針を文部科学省がまとめた。夏休みが近づいていることから、宿題も意識し、公表を急いだ。最近、話題に上る機会が急速に増えた生成AIは、膨大な情報を基に、ある単語や文章の次に来る言葉を推測し、統計的にそれらしい応答を生成する仕組みだ。事実と全く異なる内容が出力される「落とし穴」も伴う。

 試しにチャットGPTに「海について中3の作文」を書くよう入力すると、「海は私たちにとって魅力的で神秘的な場所です」と始めた。「多様な生態系が広がる」「多くの楽しみを提供する」と示す一方、「危険が潜む」「環境への配慮」などの留意点も挙げ、一見もっともらしい。だが、生徒がこのまま学校に出すのは、もちろん望ましくない。文科省の指針では、読書感想文などを提出する際、AIの生成物を自分の作品とするのは不正行為で、自分のためにならないと指導するよう促している。

 指針は、使う力を育てる姿勢を重視しつつ、批判的思考力や創造性への悪影響、個人情報流出などの懸念から利用を限定するよう求めた。特に小学生には慎重さが必要とした。かじ取りは難しいが、子どもが自分の頭で考えて適切に使いこなす力を養う教育が必要だ。

 有効な活用例として挙げたのは、グループ学習で論点を補うことや高度なプログラミング学習など。定期テストで子どもに使わせることや創作での安易な利用は不適切とした。さらに、個人情報を入力しない、成果物を授業外で公表すると著作権侵害の恐れがある、といった注意事項の周知にも重点を置いた。

 どれも常識的な内容で、実際の対処は走りながら考えることになる。生成AIは日々進化しており、使ううちに想定外の課題が浮かび上がりそうだが、その都度対処し、手探りで進むしかない。そもそも生成AIの多くは未成年の利用を制限している。チャットGPTも13歳以上で、18歳未満は保護者の同意が必要だ。参考に示した学校向けのチェックリストでも年齢条件を明示し、利用規約を守ることを掲げた。

 だが、スマートフォンの所持率は中高生が9割以上、小4から6年生も6割を超す。一律禁止は困難で、日常的な付き合い方を探る必要がある。そのため生成AIの利点と欠点、情報の真偽を確かめる使い方などを事前に学ばせるよう求めたことは非常に重要だ。実際に活用している高校の教員に聞くと、学習指導要領が重視する、生徒が主体的に考え、議論するような授業で論点を整理するため参考として使うのは有効だという。

 さらに、教員の授業の準備や、業務上の文書作成には時短効果が大きく、働き方改革に役立ちそうだ。児童生徒が情報リテラシーを育む機会にするなら、まずは教員が使ってみることだろう。

 その上で、子どもだけでなく保護者にも、AIに頼り切ったのでは思考力が付かず、最後は自分で判断する必要があると伝えて、理解を得てほしい。子どもが自ら考え、表現する力を育てることを最優先にするべきだ。そのための教員研修など学校への支援は必須で、文科省や教育委員会には一層の配慮を求めたい。