稽古で陸奥親方(右)と話す霧島=11日、名古屋市の陸奥部屋宿舎
稽古で陸奥親方(右)と話す霧島=11日、名古屋市の陸奥部屋宿舎

 霧馬山改め、師匠の現役時代のしこ名を受け継いだモンゴル出身の新大関霧島が、満身創痍(そうい)で大相撲名古屋場所の土俵に上がった。けがで初日から休場し、4日目から異例の途中出場。大関として霧島として使命感を背負っての難しい決断だったろう▼師弟の改名のやりとりが新聞記事に載っていた。師匠の陸奥親方に打診され、本人は「それはいいです」と答えた。親方は拒否されたと戸惑ったが、よくよく聞くと「良いです」の意味で安心したという。稽古の虫で真面目な性格というから、重みを自覚し恐縮したせいもあろう。日本語とは難しい▼こちらは「便利でいいですよ、いいですよ」と再三促されて取得はしたものの、「もういいです」と返納する人までいる。トラブルが後を絶たないマイナンバーカードのこと。大臣に言わせると、自主返納は「微々たる数」らしい。かといって我々国民の大半が安心しているわけでは決してない▼とにもかくにも普及と突き押しをさく裂したが、土台となる下半身がついていかず体勢を崩したといったところか。総点検で不安を払拭し立て直せるか、形勢は穏やかではない▼先代霧島は細身の鍛え上げた怪力で巨漢をつり出し、土俵際のうっちゃりも得意とした。問題を抱えたまま、追い込まれての力任せの強引な一手は御免被りたい。少なくともカードの名を変えようなんて安易に考えないことである。(史)