犬や猫などのペットを飼っている人はご存じだろうが、動物に見えている景色は、人間に見えている景色と同じではない。色の識別や視野、視力などに違いがあるからだという。しかし特に意識しない限り、同じように見えている前提で考えてしまう▼例え話に使われるのが、犬小屋に赤いペンキを塗ったら犬が嫌がって中に入らなくなったケース。犬が嫌がったのは赤い色ではなく、実はペンキの臭い。犬は赤い色を人間のようには判別できないそうだ。その代わり嗅覚は人間よりも鋭い▼生息環境がそれぞれ違う動物たちは視覚、聴覚、嗅覚などの中から、種が生き残るのに最適なアンテナを発達させてきた。このため目や耳から得る情報は一様ではない▼北朝鮮やロシアの国民も似たような境遇なのかもしれない。食糧難の中で核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に加え、長引くウクライナ侵攻を巡り民間軍事会社の反乱騒ぎがあったロシアでも大きな反発は伝えられない。怖くて我慢しているだけでなく接している情報がわれわれとは違うのだろう。日本も戦時中は同様だったという▼ネット時代の今は、じかに見聞きするよりも、さまざまなメディアを通じて得る情報が飛躍的に増えた。増えること自体はいいことだが、全てが真実とは限らないし、何らかの意図が働いている場合もある。老婆心ながら、何でも鵜(う)呑(の)みにしないようにご用心だ。(己)