山陰両県は大雨に見舞われた後、猛烈な暑さが続いている。照り付ける日差しに、少し屋外にいるだけで早くも夏バテ気味になってしまうが、草木の鮮やかな緑は成長を感じさせ、目にもまぶしい▼田んぼの稲もいつの間にか青々と背丈を伸ばした。生育に大事な時季だけに、稲作農家は暑い中でも雑草防除や周辺の草刈り、水管理など大切な作業が続く。実りの秋へ、台風などの被害がないことを願うばかりだ▼主食として欠かせない米の将来を考えると心配になる。国民1人当たりの米の年間消費量は1962年度の118キロをピークに減少。2020年度は50・8キロと半分以下に落ち込んだ。消費の中でも弁当や外食の割合が増え、米を買って家庭で炊く割合は低下しているという▼両県の中山間地域では、農家が小規模な農地をそれぞれに守ってきた。とはいえ高齢化が進み、田植えや稲刈りなどの作業を委託したとしても、維持には限界がある。米の平均取引価格も下落傾向。苗代や委託料、肥料代がかかり「収支でみれば赤字。何のために米を作っているのかという気になる」との声も漏れる▼高齢化や担い手不足といった課題の解決に向けて、農地集積・集約化が進められてはいる。ただ、小規模ながらも受け継いできた農地を守り続けようとする人の思いも大切にしてほしい。せめて張り合いを感じられるような仕組みにならないものか。(彦)