2027年に石見銀山遺跡の世界遺産登録20周年と銀山発見500年が重なるのを見据え、魅力や価値を情報発信しようと、大田市が海外との交流やインバウンド事業に乗りだす。9月に同じく世界遺産の鉱山遺跡があるポーランドに関係者が出向き研究や保全活用のヒントを探るとともに現在、未公開の石見銀山の間歩(坑道)をツアーで公開し観光客誘致を図る。
世界各国の鉱山遺跡は、学術価値や歴史的な意義を伝えにくいといった共通課題を抱える。石見銀山遺跡単独ではなく、各国の関係機関とスクラムを組み、訴求力を高める狙いがある。
視察するのはポーランド南東部の世界遺産「タルノフスキェ・グルィ鉱山」。稼働時期や大航海時代に世界経済に影響を及ぼした点など石見銀山遺跡と共通点があり、管理する郷土愛護協会から団体設立70周年記念イベントに招かれた。
武田祐子教育長やNPO法人石見銀山協働会議、石見銀山ガイドの会などから5人が出向き、石見銀山遺跡の保全活用の取り組みを発表。ポーランド側との共同研究や民間主導の保全活用、ガイド育成について情報交換や連携策を探る。
インバウンド対策は観光庁の事業を活用し、銀山遺跡最大の大久保間歩の未公開部分を公開する。大量の銀鉱石を産出した福石場を高照度の照明で照らして巨大空間を見てもらうほか、間歩の暗闇の中で食べ物を味わい、においを感じてもらう計画。大田市の大森、温泉津両町内で、石見神楽などの体験と宿泊をセットにしたプランも練って高付加価値化を目指す。
21日の市議会臨時会で、関連事業費や小学校の外壁の補修工事費を盛り込んだ3250万円の23年度一般会計補正予算案を可決。楫野弘和市長は「一層の国際化を図りたい」と話した。補正後の一般会計総額は前年度同期比1・10%減の236億4400万円。 (曽田元気)