左上からオリオン座に向かって流れるのが「ペルセウス座流星群」。好条件の今年、観察してみませんか?(2019年8月13日・松江星の会提供)
左上からオリオン座に向かって流れるのが「ペルセウス座流星群」。好条件の今年、観察してみませんか?(2019年8月13日・松江星の会提供)

 毎年8月になると、空を見上げると多くの流れ星が観測できる。それが「ペルセウス座流星群」だ。三大流星群の一つで、誰でも目にすることができる。暗い場所であれば、1時間あたり40個以上の流れ星を見つけることができるという。今年は特に、月明かりの影響が少なく、好条件が揃う。絶好のチャンスを逃さないため、「松江星の会」の安部裕史会長(65)に、観察のポイントを聞いた。
(Sデジ編集部・鹿島波子)

 

▽「ペルセウス座流星群」とは


 そもそも「流星」(流れ星)とは何か。国立天文台によると、宇宙空間にあるちりの粒が地球の大気に飛び込んで激しく衝突し、高温になってちりが気化した際、光を放つ現象のことを指す。このちりが多く集まっているのが彗星の軌道上。地球の軌道と彗星の軌道が交差するタイミングは毎年決まっており、彗星の軌道上のちりの粒が、特定の時期に流星群として出現している。

 実際、ちりは平行に大気圏に飛び込んでくるが、地上から見ると、放射状に降りてくるように見える。ペルセウス座の付近の放射点を中心にして四方八方に出現する流星を「ペルセウス座流星群」と言う。

「ペルセウス座」付近を放射点にして、流れ星が見える(2023年8月13・14日、午前3時ごろの東京の星空 ©国立天文台)


 

▽見頃のピークは「お盆」


 国立天文台によれば、一般的な出現時期は7月17日から8月24日。流星群が増えるのは8月中旬以降で、松江星の会の安部会長は「毎年お盆頃がピークで、今年は8月12、13日の夜が見ごろ」と呼び掛ける。今年は16日が新月で、12、13の両日は新月に向かう下弦の月(三日月)の頃になり、月明かりの影響が少なく好条件が重なった。

 夕方ではまだ放射点は地平線上。「放射点が昇っていくのが午後9時ごろ。北東の空、ペルセウス座を起点にして、明るくて早い流星が見えてくる」と安部会長。夜中から明け方まで、観察しやすい時間が続くという。
 

◆2019年8月12日 松江星の会撮影のペルセウス座流星群(タイムラプス)@一畑薬師



 
 

▽星空観察で事前に準備すること


 では実際に星空観察するのを前に準備に必要なものを聞いた。

<服装・持参品>
 ◎長袖、長ズボン
 ◎敷物(ブルーシートなど)
 ◎蚊の対策(虫よけスプレーなど)
 ◎ライト2本
 ◎タオル
 ◎寝袋


 まず、安部会長は「望遠鏡や双眼鏡は要らないです」と強調した。流星群は自分の目で直接見るのが醍醐味(だいごみ)。加えて、夏の野外の大敵である「蚊」の対策が何よりも大切だ。かゆみを感じず観察するためにも、長袖長ズボンを着用し、虫よけスプレーなどを使って夜空に集中したい。ただし、火を使う「蚊取り線香」は暗闇で危ないので、控えるべきだ。

「松江星の会」では定番の2種類のライト。右はペーパータオルで覆った「暗いライト」だ

 そして、重要なのがライト。1本は安全確認や忘れ物チェックなどでそのまま使うが、別にもう一本、「暗いライト」を持参するのが、松江星の会では定番だ。普通のライトを細工したもので、作り方は簡単。100円ショップなどで売っている小さいライトの先を、ペーパータオルで覆って輪ゴムで止めるだけ。暗闇で夜空を10分も見ていると、目が慣れて空が白く見えるほどになる。そんな中で、星図を見たり、流れ星の記録を付けたりするのに、普通のライトだと明るすぎてまぶしいため、暗いライトが役に立つのだ。

 準備ができたら、早速星が見える場所に行く。星空観察でのオススメは「寝っ転がって見ること」。安部会長は「街頭がなく、広くて安全な場所がいい。近くに駐車場があり、少し離れたところに自動販売機があれば、水分補給もできる。日中に良さそうな場所を探しておいて、夜改めて来るといい」と提案する。星図と見比べやすくするため、足の方向を「北」にすると分かりやすい。敷物を敷いて寝袋を引き、枕代わりにタオルを折って頭にあてれば、あとはボーッと空を眺めるだけだ。

松江星の会メンバーによる星空観察の再現。暗いライトで星図を確認しながら寝っ転がって見る=松江市中原町、市役所屋上


 

▽流れ星の楽しみ方は「目の端で」「誰かと一緒に」


 どうやって見つければいいのか。安部会長によると、ペルセウス座付近が起点になるが、放射状にいろんなところへ飛んでいくので、特定の箇所を見るのではなく、空を広く見るといいそうだ。ペルセウス座がすぐ分からない人に向けて「カシオペア座の辺りだと思うと分かりやすい」と教えてくれた。また、「松江星の会流」の見方は「正面よりちょっとずらして目のはじっこで見ること」。暗い星は特に、正面より目の端の方が見えるという。

天の川に沿って流れるペルセウス座流星群(2枚合成写真)。天候が良ければこんな幻想的な夜空が見えるかも(2020年8月13日・松江星の会提供)

 さらに、楽しむコツは「誰かと一緒に見ること」。見つけた人が大声で「飛んだ!」と言えば、「どこどこ!」と盛り上がる。家族や友人などと複数で見ていれば、一緒に見えた時には喜びが倍増する。より上級者の楽しみ方とすれば、星座の名前や場所も覚えること。流れ星を見つけた時も「こと座の北に流れたよ」などとより詳しく情報を共有できるのだ。

 夏の空は花火もいいが、さらにスケールの大きい天体ショーが身近で楽しめる。花火のような人混みもない。家族や友人を誘って静かに空を見上げ、夏の思い出をつくってみるのはどうだろうか。

松江星の会が2018年8月12日に開催した「ペルセウス座流星群観察会」の様子。仲間と一緒に見ると楽しみは倍増する(松江星の会提供)

 

▽夏休みの天文イベント(2023年)


 8月は夏休み期間で、家族でオススメの天文イベントも多い。松江星の会が松江市と共催する「夏休みの天文教室」は8月13日(午後8時~9時半)に大塚山公園(松江市八束町波入)で開催する。夏休みの教室としては、市役所の屋上以外の場所でやるのは初めて。大塚山の頂上の電灯を、その時間だけ消灯し、芝生に寝転がれるという好条件で観測できる。要予約で締め切りは8月7日まで。安部会長も「見たことない人はぜひ参加して、空の広さを実感してほしい。1時間に1個2個でも一緒に見ることができればなと思う」と参加を呼び掛けた。


<山陰両県の天体観測イベント>
◎大塚山公園(松江市八束町波入)
 「夏休みの天文教室」
 8月13日 20:00~21:30

出雲科学館(出雲市今市町)
 8月26日 19:30~21:00

島根県立三瓶自然館サヒメル(大田市三瓶町多根)
 8月5、11、12、19、26日 ①20:00~ ②21:00~

さじアストロパーク(鳥取市佐治町高山)
 毎週金、土曜 20:00~
 8月6、8~15日 20:00~(11~14日は21:00~も)