6年前に大阪の漢方スクールで薬膳を学び、一番心に残ったキーワードが「その人による」でした。薬膳では、一人一人体質が違えば、暮らしている環境も違うので、どのような食材や調理法、過ごし方が適しているかは、その人によると考えます。
長男(3)を出産して初めての育児は、右も左も分からず、毎日不安でした。離乳食を始めるタイミングや体重の増えも「これでいいのかな」と「正解」を探していました。他の子と比べては、ますます不安を募らせました。
そうしているうちに1歳になり、同時に偏食がスタート。ニンジンもホウレンソウも、急に一切食べなくなりました。
かんしゃくもひどくなり、気に入らないことがあると、怒って皿を投げることもしばしば。立って歩き出し、部屋中にご飯粒をまき散らすことも日常茶飯事で、毎食毎食、怒ってばかり。食事の時間がストレスでした。
どうして食べてくれないんだろう。本気で悩んだ私はインターネットや育児書に正解を求めましたが、探せど探せど、息子にぴったりな方法は見つかりませんでした。検索するたび、紹介されている方法や他の子と比べては「もう疲れた」と途方に暮れていた時に、薬膳の「その人による」という考えと改めて出合う機会がありました。
「そうだった! 赤ちゃんも一人一人違うんだ。だから、人と比べなくていいんだ」と、目からうろこが落ちた気分でした。ハッとして息子を見ると、キラキラ光るつぶらな瞳がじっとこちらを見ていました。
「久しぶりに目をちゃんと見た」とドキッとして、「なんてきれいな目をしているんだろう」と感激しました。そして、今まで、いかに外に目と意識を向けていたのかと反省しました。
この時、やっと答えに出合うことができました。それは「正解は目の前のわが子」ということ。正解が見つからなかったのも当たり前。だって、目の前のわが子を見ずに、外にばかり目が向いていたのですから。
大人も子どももそれぞれ体質が違います。体に合う食材も形態もみんな違う。だから、食事の量もペースも違って当然なのです。
みんなと同じようにできる方がいい、何でもたくさん食べる方がいいと、ついつい「周りと同じが正解」と考えてしまいます。でも、「正解はわが子」でOK。わが子のペースで、わが家のペースで、というのが一番大切だなぁと実感しました。子どももママも、みんながマイペースに、健康で元気に過ごせたらいいなぁと願っています。
(管理栄養士、出雲市在住)