先日、出雲市内で開かれた住民対象の防災講座に参加した。そこで4枚の写真を同時に見せられた。1995年1月に発生した阪神淡路大震災、2004年10月の新潟県中越地震、11年3月の東日本大震災と16年4月の熊本地震に関連するもの。いずれも避難所となった体育館全体を上から俯(ふ)瞰(かん)した構図だった▼「どれがいつの災害の写真か分かりますか」-。現地で避難者の支援活動に当たった経験を持つ、島根県立大の渡辺克俊講師から問いかけられた。ところが、どれも避難した人が床に荷物を広げて座ったり、横になったりしており、正直、何が違うのか見分けがつかなかった▼段ボール製のベッドや仕切りの開発、高齢者や障害者に配慮した福祉避難所の設置をはじめ、この20~30年で避難所の対応は着実に進展した事実はある。とはいえ、避難所に対するイメージを大きく改めるほどの目に見えた変化はまだ起きていない、とも感じる▼講座の会場で民生児童委員の男性がこう指摘していた。「(避難行動)要支援者の名簿登録者の自宅を訪ねると、共通して『ぎりぎりまで家にいる』『2階への垂直避難や市が指定した避難所での生活は難しい』と言われる」。それが現実なのだろう▼自治体の避難指示と、その実績のギャップの改善が昨今の課題なのは明らかだ。住民の意識向上とともに、避難所の「魅力化」やアピールも解決策の一つと思う。(万)