65歳以上の高齢者を対象に新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいる。多くの自治体では予約方法がインターネットと電話に限られ、サーバーや回線がパンクして、予約できない事態が発生。ネットが不得手な人向けに職員やボランティアが予約を代行するサービスも一部であったが、手挙げ方式という制度設計が各地でトラブルを招いた▼続いては基礎疾患を持つ人、高齢者施設などの従事者、60~64歳の人の順番となる。手挙げ方式のままでは、さらに深刻なトラブルを招く予感がしてならない▼「基礎疾患」の定義について国は腎臓病、心臓病、呼吸器疾患、睡眠時無呼吸症候群といった14疾患と一定以上の肥満の人を対象とする指針を示す。だが、基礎疾患を抱える住民を自治体が把握するすべはない。住民の申告を受け、接種を予約する流れとなるだろう▼厚生労働省は接種の手引で「診断書等の証明書は必要としない」と明記。本人や介助者が予診票に病名を書くことで良しとする。つまり「基礎疾患がある」と主張さえすれば制度上、優先接種の機会を得ることができる▼高齢者接種の段階で「我先に」と不正な手段で接種を受けようとする事案があちこちで問題となった。本当に性善説で対処できるのか。最終的な制度は自治体が決める。基礎疾患を四つ抱える身として、正直者がばかを見るような制度にならないよう願うのみだ。(釜)