最終公演を楽しんだ観客を見送るパフォーマーたち=9月18日、松江市学園南1丁目の旧島根県立プール跡地広場特設大テント
最終公演を楽しんだ観客を見送るパフォーマーたち=9月18日、松江市学園南1丁目の旧島根県立プール跡地広場特設大テント

 今夏、6年ぶりの開催となったポップサーカス松江公演。コロナ禍で3年間、公演ができなかった苦難を乗り越えての舞台に約7万5千人が来場した。運営に携わり、うれしいことがあった▼孫「面白かった」。父母「すごかったね」。祖母「これから何を食べに行く?」。公演後、目にしたやりとりだ。50歳の当方も幼い頃、サーカスを見に行った後、家族で外食したことを今でも覚えている。「大きなテントの中では、パフォーマーが汗をかき、土や観客のにおいが漂う。においが記憶と結び付き、強く印象が刷り込まれる」。ポップサーカスの久保田悟社長の言葉だ▼デジタル社会が進む中でもリアル(現実)の良さは変わらず、より際立つ。年配の観客が願った。「次は大きくなった孫が家族を連れてきてほしい」▼地元の良さも感じた。公演後、駐車場整理で帰路に向かう車にお礼の意味を込めて頭を下げると、返してくれる人が多かった。他地域での公演では〝いちゃもん〟めいた苦情も多いというが、ほとんどなかった。「島根の人たちは本当にいい人」。サーカス関係者が口をそろえた▼2カ月にわたり、国境を超えて集まった13カ国のパフォーマーの華麗な技に、テント内には歓声と拍手が響いた。コロナ禍が落ち着き、日常にサーカスという非日常が戻ってきた。たくさんの笑顔に出会い、「当たり前」の大切さをかみしめた熱い夏だった。(添)