衆院議長として議事を進行する細田博之氏=2021年11月10月、衆院本会議場
衆院議長として議事を進行する細田博之氏=2021年11月10月、衆院本会議場

 どれだけの地元有権者が、きのうの会見に納得しただろう。

 細田博之衆院議長(79)=島根1区、11期=が記者会見し、体調不良を理由に、正式に辞任を表明した。焦点の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係については、従来の衆院議院運営委員会の与野党代表を集めた非公開の場での説明をなぞり、「特別な関係はない」と強調、率先して疑念を解消する姿勢には程遠かった。教団と政治の「闇」を置き去りにしたまま、議長を退くことで幕引きさせるわけにはいかない。

 細田氏は、故安倍晋三元首相とともに旧統一教会との関わりが深いとされる清和政策研究会(安倍派)に所属し、会長も務めた。2019年には、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁も出席した教団の友好団体主催の会合で「会の中身の内容をさっそく安倍総理に報告したい」とあいさつしたほか、国政選挙で教団票を差配したか、ないしは、それを知っていた可能性も指摘されている。

 過去3回の文書や密室での説明では、教団側の会合に計8回出席したことなどを認めたが、票の差配や選挙での組織的支援や動員の受け入れは否定。記者会見を一貫して拒んできた。

 旧統一教会問題で問われるのは、霊感商法や教団への多額献金による被害者の救済と政策決定への影響、教団の名称変更、社会問題化しながら、なぜ長年メスを入れられなかったのか、という政治との関係だ。前者は着手したものの、後者に関して先頭に立つべき国権の最高機関が役割を果たしたとは、とても言えまい。議長として指揮しなかった責任は大きい。

 これまでの証言で見逃せないのは「安倍氏は大昔から教団と関係が深い」と語った点だ。細田氏は安倍氏亡き後、「教団と政界」を知り得る立場の一人とも言える。議長ポストに就いていることを盾に詳細の言及を避けてきたが、今後は一議員に戻る。清和会の前会長としても、つまびらかにし、解明していく務めを負っていることを忘れてもらっては困る。

 細田氏を巡る問題は旧統一教会に関するものだけではない。週刊誌が報じたセクハラ疑惑も説明せず、辞任会見を迎えて、「単なるうわさ話」とはねつけた。だが、その一言だけでは疑念は拭えない。

 在任中に疑念を持たれながら説明から逃げ回り、最後に応じた記者会見も出席者を制限する形にした。元社長の性加害問題を受けたジャニーズ事務所の会見で、特定の記者やジャーナリストを指名しないようにするための「NGリスト」の存在が明らかになり、会見の公正性に疑いの目が向けられたばかり。これでは説明責任を果たしたとは言えないだろう。

 会見では、脳梗塞の症状が出たなどとして議長辞任を表明する一方、「議員としての活動はできる。頑張ってみたい」と次期衆院選への出馬に意欲を示した。国会議員の仕事はそんなに楽なのだろうか。2年前の衆院選で細田氏に一票を投じた9万638人は、国のため、そして地元のために、しっかり働いてくれと願っているはずだ。議長辞任と衆院選出馬は「理屈が合わない」という地元関係者の不信感は拭えていない。

 今回の会見を、有権者はどう評価するだろう。