10月末のアユの産卵期に合わせ、日野川河川事務所(米子市古豊千)が12日から4日間、日野川の河口から2・5キロの場所で川床の砂を取り除く産卵場整備を行った。アユの減少を受けた日野川水系漁協(同市熊党)の要請で、環境改善の取り組みとして毎年実施。2021年以降、稚アユの量は回復傾向にあり、関係者はさらなる増加に期待する。
日野川は鳥取県内有数のアユの釣り場として知られるが、近年は流域の山林の管理状況が悪化。雨量が多い年は、産卵場所となる1~3センチの小石が流れ込んだ砂で埋まるなどし、アユの量が不安定になっていた。
3~5月に日野川に仕掛けたヤナにかかった稚魚を量る「くみ上げ量」は、04年に前年の1・3%に当たる4キロまで激減。これを受けて05年から産卵場整備を始めた。
開始翌年から大きな成果が得られ、06~13年のくみ上げ量は1トン以上の高水準で推移。14年以降は生まれて間もないアユが過ごす海の環境悪化などで減少したが、21年からは再び増加し、23年は10年ぶりに1トンを超えた。
整備は長さ200メートルの区間で行い、委託を受けた建設業者がブルドーザーで川底をかき混ぜ、砂を下流に流した。最終日の15日は約100人のボランティアが川に入り、足で川底を平らにならした。
日野川漁協鮎種苗生産場(鳥取県日吉津村富吉)の森下尊士(たかお)場長は、産卵場整備と海洋環境の改善の二つがそろって初めてアユが増えるとし「今年は1トンを超えて胸をなで下ろしているが、環境悪化の根本的原因は未解決だ。川だけでなく、流域全体で改善に取り組む必要がある」と山林や田畑の管理の重要性を指摘した。
(中村和磨)