ふんどし一丁の氏子たちが神社の舞堂でひしめき合う、日本三大奇祭の一つ「蛸舞(たこまい)神事」が15日、鳥取県伯耆町福岡の福岡神社であった。その昔、海で遭難した祭神を大蛸が助けた故事にちなむ県指定無形民俗文化財で、コロナ禍を経て4年ぶりの開催となった。過疎化にあえぐ地域で「奇祭の復活」がもたらしたものとは…
(米子総局報道部・吉川真人)
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昭和30、40年代が集落の全盛
米子市中心部から南へ車で40分ほど行った先に福岡神社はある。日野川右岸の国道181号を折れて鬼守橋を渡り、県道からさらに小道へ。カーナビの案内も少し心細くなったところで、秋に日を浴びて輝く赤いのぼり旗が、その場所を知らせた。
稲刈りが終わった田のあぜに寄せて車を止め、鳥居をくぐり石段を駆け上がると、社務所の前で集まる人があった。
声かけすると「まずは宮司さんに」ということで、例祭が始まる前の拝殿で花田敏子宮司にあいさつした。先代から神社を継ぎ19年。コロナ禍でも例祭を続けながら神事の「復活」を心待ちにしていた一人として、静かな口調ながら「開くことで残したい」と強い思いを聞かせてくれた。

社務所で声をかけた仲村陽一さん(67)は昨年まで3年間、総代長を務めた。例祭は「10月の第3日曜日」だが、かつては自身の誕生日でもある「10月19日」だった。その日はまさに祝い一色。「出店もたくさん並んだ。農業、林業の村で、人も多く、いくらでも集まってきた」。昭和30、40年代のにぎわいは集落の全盛だった。
定年退職後、県外から45年ぶりに戻った集落で、驚いたのは...