「1票の格差」が最大3・03倍だった2022年参院選について、最高裁大法廷は「合憲」とする判決を言い渡した。合区を導入し、格差が3倍程度まで縮小した16年選挙以降は3回連続で合憲判断となった。
前回の19年選挙からの3年間、参院は何らの是正措置も取れなかったのに、この結論には大いに疑問が残るが、判決は「さらなる是正は喫緊の課題」とも明言しており、検討のための時間的猶予を与えたに過ぎない。
判決前、与野党でつくる参院選挙制度改革の専門委員会委員長は、最高裁判決を見て具体的議論を開始する姿勢を示していたが、決して「合憲」に安穏としてはならない。
民主主義の基盤である選挙は、投票価値の完全な平等の下で実施すべきであることは論をまたない。格差を3倍で固定化させることは許されず、参院は危機感を持って一層の是正に全力を挙げるべきだ。
参院の「1票の格差」訴訟は半世紀以上にわたって提起されてきた。この間に最高裁の姿勢は変化し、近年は積極的に是正策への注文をつけ、参院の取り組みを中心に吟味するようになった。
こうした経緯を振り返ると、今回の合憲判断はその延長線上にあると言える。
10年、13年選挙(格差5・00倍、4・77倍)を「違憲状態」とした当時の最高裁判決は、都道府県単位の選挙区割りを疑問視し、改革を求めた。
これを受け国会は公選法を改正し「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を導入。結果、格差3・08倍に縮小した16年選挙について、最高裁は「合憲」とし「これまでにない手法を導入した」と高く評価した。
改正法の付則で「19年参院選に向けて抜本的な制度見直しを検討し、必ず結論を得る」と宣言しながら、実現できなかった同年選挙(同3・00倍)についても「改革は漸進的にならざるを得ない面もある。是正を指向する国会の姿勢が失われたと断ずることはできない」と理解を示し「合憲」としていた。
今回の最高裁判決も、合区によって「数十年間、5倍前後で推移した格差が3倍程度まで縮小した」と評価。しかし、対象4県の投票率低下などが起きていることに触れ「慎重に検討すべき課題がある。合理的な成案には、なお一定の時間を要する」としている。
決して現状を容認したわけではない。
参院は速やかに、改革議論を再開し、加速させねばならない。合区には、最高裁が指摘した投票率低下のほか、地方軽視などの批判も根強い。まずは合区の功罪を検証すべきだ。
その上で、全国11ブロックの大選挙区制など与野党から出されている各案をたたき台に、議論を深めてもらいたい。
折しも次期衆院選に向け、参院議員を辞めて衆院議員を目指す「くら替え」の動きが各党で活発化している。「国会の主戦場は衆院」とする露骨な声まで聞かれ、「参院軽視につながる」との懸念が広がる。
参院は衆院のカーボンコピーであってはならない。同じような選挙制度ではなく、参院は衆院とは異なる手法で広く民意をくみ上げ、国政に多様な意見を反映させる本来の二院制を目指す改革議論にも踏み込むべきだ。
時間を浪費してはならない。