島根県隠岐諸島の知夫里島に伝わる民俗行事を長年研究し、先日、山陰中央新報社の地域開発賞(文化賞)を受賞した知夫村の山(やま)穂(めぐみ)さん(78)は、19歳から40年余り、知夫郵便局の外務員だった▼務めを果たしながら、村の文化に関わる見聞きしたことを発信したいとの思いで、「郵便局だより」の執筆、編集や配布を始めた。35歳の頃である▼村の出来事を書く「ニュース」と、村に伝わる昔話や、かつて使われていた民具を紹介する連載ものなどで構成。記事の発掘に困ったり、編集に行き詰まったりしながらも、23年間続けた。既にテレビや新聞があったとはいえ、島のことに関しては、毎日歩いている人にかなうはずはない。今となっては、貴重な記録だ▼11月に開館50年を迎えた浜田市金城町波佐の金城民俗資料館。展示されている山仕事や生活道具、作業着などは、一部が国の重要有形民俗文化財に指定されている。開館に先立ち、将来重要になるとの見立てから、「一家一点」の掛け声で民家から収集されてきた▼開館時から管理を請け負う「西中国山地民具を守る会」の主力メンバーには、隅田正三会長(81)をはじめ元郵便局長が複数いる。郵便局と民俗学は親和性が高い。ぱっと入っただけでは分からない変化を感じる力が自然と養われていくのだろう。思えば「知の巨人」といわれた民俗学者の宮本常一も、若き日は郵便局員の時があった。(万)