呪いの言葉について説明する上西充子教授=大田市内
呪いの言葉について説明する上西充子教授=大田市内

 バルス-。スタジオジブリの映画『天空の城ラピュタ』の終盤で、主人公たちが唱えると城が崩壊する有名な呪文だ。アニメとはいえ言葉の力のすごみを感じるが、現実にも恐ろしい言葉は転がっている▼「(残業が)嫌ならやめれば」「(低賃金は)仕方がない。みんな我慢している」。「お母さんなんだからしっかり」。質問に対して論点をずらす話法を「ご飯論法」として広めた法政大の上西充子教授によると、これらは思考の枠組みを縛る「呪いの言葉」なのだという▼一見まともだが、都合良く黙らせる支配構造が潜在する。「嫌ならやめれば」は、やめる自由は確かにあるが、自分を主語に「それはできない」などと考えた時点で、相手の土俵に乗ったということ▼呪いにかからないためには「あなたが残業が発生しない体制を整えるべきでは」と、相手に答えを求める問いを考えると、本質的な問題や状況に気付ける。ただ口にするのは早計。問題を可視化し、思考を柔軟にする練習法で、対処法はそれから冷静に考えるのがベストだという▼大田市内であった上西さんの講演を聴き、自問自答した。呪いの言葉をかけていたかも。いやかけられたこともあるか…。思い出せないことが呪縛の中にいた証拠だ。上西さんによると対極にあるのが相手の力を引き出す「灯火(ともしび)の言葉」。自然と口にするにはまず自分にかかっている呪いに気付かなければ。(衣)