38年ぶりに日本一に輝いたプロ野球・阪神タイガース。興奮冷めやらぬ中、熱心なファンの知り合いから送られてきた写真に目を疑った。
日本シリーズのMVP選手発表の際、阪神のベンチ前で自らが呼ばれると思って立ち上がり、違う名前が呼ばれて豪快にずっこける雲南市出身の糸原健斗選手(31)の姿だった。チームを盛り上げる演出の一環で、スポーツ紙で「糸原新喜劇」などと報じられた。
糸原選手を開星高校時代に取材した印象は、ムードメーカーというより寡黙でストイック。年齢を重ねたからなのか、大観衆の前でお茶目な一面を見せたことが意外だった。悲願の日本一に浮かれる様子も伝わってくる。
2021、22年シーズンはレギュラーとして活躍したものの、今季は代打での出場が中心になった。苦悩の中で役割を全うし、つかんだ日本一は、全てが報われた瞬間だったのかもしれない。ずっこけた姿を周りで見守る仲間の笑顔は、チームに必要な存在だったことを証明する。
23日は大阪市のメインストリート御堂筋と神戸市内で優勝パレードがあった。38年間待ち続けたファンの思いも格別だろう。かく言う当方は広島カープファン。日本一は前回の阪神より1年前の1984年以降、成し遂げておらず、プロ野球12球団で最も遠ざかる。阪神ファンの知り合いをうらやましく眺めつつ、来季40年ぶりに歓喜に酔いしれる瞬間を夢見る。(吏)