皆生温泉「Tライン」活性化のアイデアを詰め込んだ「妄想模型」を説明する吉谷崇さん(左から2人目)=25日、米子市皆生温泉3丁目の市観光センター
皆生温泉「Tライン」活性化のアイデアを詰め込んだ「妄想模型」を説明する吉谷崇さん(左から2人目)=25日、米子市皆生温泉3丁目の市観光センター

 「誤った確信」などと定義される心理学用語で、日常会話でも聞かれる「妄想」。いい意味で使われることは少ないかもしれないが、時として物事を突き動かす。

 日本初の「妄想模型」現る-。先日、米子市の皆生温泉であったイベントの会場で、そう名付けられた温泉街の縮尺模型を囲み、ひとしきり盛り上がった。歩いて楽しいまちを目指し2年前から進む社会実験「ぐるぐるかいけ」の成果共有の場。模型は官民でつくる実行委員会のアドバイザーを務める気鋭の景観デザイナー吉谷崇さんが、地元住民や市職員、中学生の「夢」を形にしたものだ。

 土地の所有権、行政の管理区分、職責を超え、現実的かどうかも問わない。海に向かって延びる桟橋は「大山が見えたらいい」。国土のラインを変えるようなアイデアもあった。

 定期的なイベント開催や遊歩道の整備などまち歩きの仕掛けや空間をつくり、改善を繰り返す取り組みは本年度のグッドデザイン賞を受賞。「とにかくやってみよう」と行動できる商都・米子の気質とともに、まちづくりの一歩目で大きな役割を果たしたのが関係者の思いを一つにした模型だった。

 吉谷さんは自ら市内の飲食店主から聞いた「流れに流れ、このまちで拾われた」という話にも意味を見いだした。考えるよりも先に動く力と誰でも受け入れる土壌。「皆生きる」という名の温泉地の取り組みに今後も要注目だ。(吉)