高校時代、先生に叩(たた)かれたことを今も覚えている。何をしたかは伏せるが鬼の形相で〓(口ヘンに七)られた。「今からお前を叩く。教員人生で初めてだ」と言われた。申し訳ないと思うと同時に、自分のしたことを悔いた。悪いことをすると廊下に立たされた。昭和、平成初期はそんな時代だった▼元大リーガーのイチローさんが北海道・旭川東高野球部を訪れ、指導した記事を読んだ。地方大会で11度も決勝に進みながら甲子園出場を逃し続けてきた同校。当方と同じ50歳の国民的ヒーローが選手に語る言葉に思わずうなずき、考えた▼「今の時代、指導する側が厳しくできなくなった。高校生に自分たちに厳しくして、自分たちでうまくなれって酷なこと」「ある時代まで遊んでいても勝手に監督・コーチが厳しいから、全然できない奴(やつ)があるところまで上がってこられた」「導いてくれる人がいないと楽な方にいく。厳しくできる人間と自分に甘い人間、どんどん差が出てくる」▼もちろん暴力やハラスメントはいけない。ただ、〓(口ヘンに七)ってもらえず、自ら律することが求められ、できる人とできない人で二極化し、格差が広がる時代を憂う▼「今の時代は誰からも嫌われたくないというのが多い」とイチローさん。本当の優しさとは何か。自分にできることは何か。人生を振り返ると大事な時期に甘えや怠けを本気で〓(口ヘンに七)ってくれる人がいた。その人たちの顔が浮かんだ。(添)