日曜の夜といえば一昔前まで「東芝」だった。国民的アニメ『サザエさん』の番組スポンサーで、『VIVANT(ヴィヴァン)』で今夏盛り上がったドラマ枠は「東芝日曜劇場」と呼ばれていた▼ともにスポンサーを降りたのは2018年3月末。「ブランドイメージ形成に一定の役割を果たした」というのが表向きの理由だ。とはいえ、15年に判明した不正会計問題を機に経営が暗転し、16年には米原発子会社で巨額損失が発覚。これらが影響したことは容易に想像できる▼そんな日曜夜の象徴が今月20日に株式上場廃止になるという。経営危機回避で増資を引き受けたのが「物言う株主」と呼ばれる海外ファンド勢だったため、経営への介入を許し混乱を来したのが要因。上場廃止と引き換えに物言う株主との決別を選んだ。苦渋の決断だっただろう▼物言う株主になる-。岡山県真庭市の太田昇市長が、来年度に市がJR西日本の株式を取得する方針を表明した。市内を走るJR姫新線は赤字で存廃議論の対象になる懸念があり「地方の足を確保するという立場から資本参加する」と市長。各地の首長に取得を呼びかけるという▼「廃止する」「残せ」と対立するのではなく、『VIVANT』の主人公のように相手の懐に飛び込んで、路線維持を目指すというのは斬新な発想だ。存廃の危機に揺れる木次線沿線の首長にとっても気になる動向だろう。(健)