JR木次線(宍道-備後落合)沿線の自治体や関係者は「次はわが身か」と受け止め、危機感を募らせているのではないか。
木次線と接続し、利用が低迷するJR芸備線の岡山、広島両県にまたがる一部区間を巡り、沿線の岡山県新見市と広島県庄原市、両県が11月27日、国が関与して存廃を議論する「再構築協議会」に参加する意向を国土交通省中国運輸局に伝えた。これを受け斉藤鉄夫国交相は協議会を設置する方針を表明。正式に設置されれば全国初となる。
再構築協議会は10月に始まった制度で、国や自治体、鉄道事業者などで構成。1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が千人未満の区間を優先して協議し、3年以内をめどに、利用を促進するか、バスに転換するかなどを決める。
JR西日本は10月、芸備線のうち、備中神代(こうじろ)(新見市)―備後庄原(庄原市)間の68・5キロについて国に設置を要請していた。
協議会では廃止ありき、存続ありきの前提を置かず議論するとはいえ、存続は数字的に厳しそうだ。JR西によると、対象区間の2022年度の輸送密度は、備中神代-東城89人▽東城-備後落合20人▽備後落合-備後庄原75人。東城-備後落合はJR西管内で最も少ない。
18年3月末で全線廃止されたJR三江線(江津-三次)の14年度の輸送密度は50人だった。13年にJR西が主導し、沿線6市町や島根県と合同で勉強会を設立。第三セクターや、自治体がインフラを保有する上下分離方式など他路線の取り組みを学んだが、大きな財政負担を伴うもので、存続への決定打がないまま勉強会は休止に。その後のJR西の廃止意向表明に、バス転換を受け入れるしかなかった。
今回の芸備線を巡り、広島県の湯崎英彦知事は「一部区間だけでなく、広域的な観点から、芸備線と沿線地域の活性化を含めた幅広い議論がなされるべきだ」とコメント。岡山県と新見市は、同市全体の公共交通を話し合う既存の法定協議会に国が関与するのが望ましいとした上で、協議会が設置された場合は参加するとした。協議のテーブルに着くに当たり、主導権を握りたいという思惑がにじむ。
一方、備後落合で芸備線と接続する木次線の22年度の輸送密度は、宍道-出雲横田の237人に対し、出雲横田-備後落合は管内で2番目に少ない54人。
11月28日、管内ローカル路線の収支を公表したJR西中国統括本部の伊藤秀真広報課長は具体的な時期は示さなかったが、出雲横田-備後落合間について「最適な地域交通体系を議論させていただきたい」と述べた。
同じ日、利用が低迷するJR姫新線が通る岡山県真庭市の太田昇市長が、JR西の株式を市として購入する方針を表明。全国の自治体にも購入を呼びかける考えを示し「まとまれば発言力が増す。地方の路線を維持するために頑張るという決意表明だ」と説明した。現行の鉄道事業法では、国の許可なしに事業者が路線を廃止できるだけに、ストップをかけるには新たな発想と戦略が必要になる。
木次線沿線の自治体も、芸備線や姫新線をはじめ、他の沿線自治体と連携し、生き残りの道を模索しなければ、生活を守るレールが途切れてしまう。