2023年5月、出雲市野郷町の伊野コミュニティセンター前であった「こどもマーケット」には地区内外から300人以上が集った。子どもたちが考えた釣り堀や輪投げのゲームコーナー、アクセサリーのワークショップなど7店舗が並び、出店する子どもの威勢のいい声が響いた。

【関連】
学びの変革~人口減少時代の教育~〈プロローグ〉 子どもは地域の希望 出雲・伊野 覚悟の学校存続 島根で続く統廃合に一石
<連載>学びの変革~人口減少時代の教育~

 母親仲間と共に企画したのは伊野小学校に長女(9)が通う兼折治加さん(36)。結婚を機に地区に住み始めたのは13年。当時、伊野小の統合議論に関心はなかった。

 長女が小規模の伊野小に通うようになり、学校教員らと密にコミュニケーションが取れる環境の良さを感じた。引っ込み思案な長女に合っていたからだ。「伊野小のような場所を求めている人もいるのではないか」と実感を込める。

 子どもが生き生きと過ごせるから、住民が期待に応えようとする。そんな環境が伊野地区にはある。

 

 ▼「これから先が大変」

 児童数が少なく、多様な価値観に触れられる機会は大規模校に劣る。その分、...