世界有数の銀鉱山のまちとして、江戸時代には最大20万人もの人々が暮らしたという大田市大森町。人口400人に減った世界遺産のまちは、地元・大森小学校の再編に揺れている。

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 「まちが築き上げてきたものがなくなるのではないか」。2011年に大森町に移住し、4歳と1歳の2児を育てる三浦類さん(37)は23年9月末、大田市教育委員会が公表した小中学校の再編素案に言葉を失った。

 名古屋市出身で東京都内の大学に在学中、大森町に本社を置く企業経営者と出会い、Iターン。都会生活では考えられない住民同士のつながりにひかれた。

 象徴的な存在が大森小だ。築70年を迎える木造校舎は伝統的な建物が並ぶまちに溶け込む。全校児童は24人。多くの住民が児童の名前や顔を覚え、登下校時は元気なあいさつが交わされる。住民が「まち全体が一つの学校」と口にするほど、皆で子どもの成長を支える風土が根付く。

 自身が通った小学校は児童数1千人超で地域との関わりは薄かった。「大森には都会にない子育て環境がある」。移住後に結婚し、子どもは大森小に通うものだと思ってきただけに、閉校の危機に不安が募る。

 

 ▼Iターン増加

 市教委の素案は、小学校を現在の15校から...