泉 智加氏
泉 智加氏

 島根県産蜂蜜を仕入れ、販売する「いち花」(松江市北陵町)の代表を務める。高齢化により生産者が減るとともに、販路開拓に悩む養蜂家がいるのを受け、島根を蜂蜜で盛り上げようと起業して5年目。自身も養蜂家として商品開発から営業まで一手に担うなど、蜂蜜への熱い思いを胸に幅広い活動を展開している。

 県内の養蜂家の協力を得て、朝採れ・非加熱にこだわった栄養分豊富な蜂蜜を販売する。

 「ミツバチは巣に持ち帰った蜜を夜に羽で水分を飛ばして乾燥させる。早朝の巣箱は
完熟した蜂蜜で満たされており、このタイミングを狙うことで濃厚な蜂蜜だけを採ることができる。栄養分が濃縮された上質な蜂蜜を味わってもらいたい」

 昨年、商品の種類とパッケージを一新。いち花独自のキャラクターを10種類ほど創出し、味によってキャラクターを割り振った。

 「同じ土地でも採蜜する時季によって味は大きく変わる。市町村ごとに分けて売り出す方針から、果実系や花香系など蜂蜜の味や特徴によってキャラクターを設定する方針に切り替えた。個性豊かなキャラクターの中から、自分好みの味を見つけてほしいという思いを込めた」

 昨年は良くも悪くも新型コロナの影響を大きく受けた。

 「売り上げは観光客の動きに左右されやすく、1カ月の販売がゼロのアンテナショップもあった。イベント販売も全て中止で、お客さんとの交流の場がなくなったのは残念。一方、コロナ禍で大切な人へのギフトとして蜂蜜が注目されるようになった。ホームページの閲覧数も増え、販路を県外の百貨店などへ少しずつ広げることができた」

 蜂蜜とコラボした加工品の開発にも積極的に取り組む。

 「今春には松江市の食品製造会社と協力し、蜂蜜とユズを掛け合わせた清涼飲料を開発した。現在は出雲市のチョコレート製造販売店とコラボした新商品開発に取りかかっている。蜂蜜とカカオの相性など課題は多いが、県外の大学の協力も得ながら商品化に向けて知恵を絞っている」(聞き手は金津智也)

いずみ・ちか
 松江市出身。松江市立女子高(現・市立皆美が丘女子高)卒。島根県の臨時職員を1年間務めた後、2011年に県観光連盟に就職。観光誘致の仕事に携わる中、「島根を一つのもので盛り上げたい」と考え、飯南町で親戚が養蜂を営んでいたことから蜂蜜に着目し、17年に起業した。趣味は道の駅巡りで、地産地消コーナーを眺めたりソフトクリームを食べ比べしたりするのが好き。市内在住。33歳。