海岸で海を眺(なが)めているところを想像(そうぞう)してください。遠くを貨物船が進んでいます。すると、すぐ前の砂浜(すなはま)を人が横切りました。その人の歩く速度は船よりずっと遅(おそ)いのですが、目の前を通ったため、あっという間に船を追い越(こ)したように見えますね。同じようなことが、夜空でも起きています。
星座(せいざ)を作っている星は、実はそれぞれが猛烈(もうれつ)な速さでばらばらの方向に動いています。しかしあまりにも遠くにあるため、その動きは何日見続けても分からず、星座の形は変わりません。ところが地球の周りを回る月は、星座の星に比(くら)べれば極(きわ)めて近いところにあるので、動きがよく分かります。
では、毎晩(まいばん)8時など、できるだけ時刻(じこく)を決めて、星座と月を見比べてみましょう。今日21日の月は、おうし座のアルデバランと、ぎょしゃ座のカペラという星を結んだ線の上あたりに見えています。それが1日たつだけで、その線を越えて、今度はカペラとオリオン座のベテルギウスの間に移動(いどう)します。
24日には、ふたご座のカストルとポルックスの近くに、27日には、しし座のレグルスの近くにやって来ます。このように、月は星座の間を駆(か)け抜(ぬ)けるように見えます。特に冬は月明かりに負けない明るい星が空に多く出ていますので、そのようすが観察しやすくなっています。
(島根県立三瓶(さんべ)自然館サヒメル天文事業室長・竹内幹蔵(たけうちみきまさ))
=隔週掲載(かくしゅうけいさい)=