ヒゲダン、オモイノタケと、山陰発のバンドが注目されている。いずれもピアノの音色が印象的。ピアノバンドと聞いて思い浮かぶのは、米国で1994年に結成されたベン・フォールズ・ファイブだ。ギターレスで、ピアノ、ベース、ドラムの3人組。「スリーでは響きが悪い」との理由でファイブを名乗った。
バンドと同名のファーストアルバム(95年)は当時、名古屋パルコのタワーレコードで輸入盤を視聴して衝撃を受けた。エモーショナルなボーカル、ひずんだベース、何よりピアノが縦横無尽に暴れ回っていた。ミスタッチをものともせず、打楽器のように弾きまくり、付けられたキャッチコピーは「ニルヴァーナ・ミーツ・エルトン・ジョン」。ポップな曲調と、グランジの暴力性が同居したバンドだった。
「ジャクソン・カナリー」「フィロソフィー」「アンダーグラウンド」といった、きら星のようなメロディーの曲を数多く収録。歌詞は「バスを止めてくれ。一人になりたい」「友達が近くにいてくれたらいいのに。だけどこんな街、彼らが気に入るわけがない」「学校にいる頃の僕はかっこ悪かった。アンダーグラウンドでなら幸せになれるさ」など、ウィーザーにも通じる「泣き虫系」。好きになる要素しかなかった。(銭)