スペイン風邪で早世した現代演劇の創始者・島村抱月と「シャボン玉」など後世に残るたくさんの童謡を作曲した中山晋平との師弟関係を中心に、女優松井須磨子と抱月やその家族との愛憎を絡めた人間模様をドラマチックな物語に仕立てた著者の最新傑作である。

 時は約100年前の明治末期から大正のころ。大正デモクラシーが芽生え、文化の花が開いた日本の良き時代。18歳で長野から上京した晋平は、自分の道を模索しながら、縁あって抱月の家の書生となる。

 そこで彼は、...