1月下旬にあった大雪で、高速道路で渋滞が発生した際のトイレが課題となった。島根県内では行政、民間の連携プレーで移動式の仮設トイレを稼働させ、尿意をもよおした人たちの窮地を救ったケースがあり、好例を踏まえ、有事に同様な活動ができるよう検討する動きが出始めている。
1月25日朝、雲南市三刀屋町中野の中国横断道尾道松江線の下りで、トラックが側溝にはまって身動きが取れなくなった。口和インターチェンジ(IC)-三刀屋木次ICの下りが約5時間にわたって通行止めとなり、1・5キロの渋滞が発生した。
事態を受けた国土交通省三次河川国道事務所は、初の試みとして尾道松江線の維持管理を担う都間土建(雲南市三刀屋町給下)に、トイレの出動を依頼。同社担当者は仮設トイレを荷台に載せた軽トラックを走らせて、立ち往生した車両に声を掛け、15人が利用した。同社土木部の安部覚課長は「『助かります』『ありがとう』と、とても喜んでもらえた」と振り返る。
同事務所が出動依頼したのは、24日に大雪が襲った名神高速道路関ケ原IC(岐阜県関ケ原町)付近の渋滞を把握していたためだ。トレーラーが立ち往生して一時は770台が滞留し、動けなくなった車のドライバーらに飲料水や食料のほか、携帯トイレが配られた。
一般的に、素早い規制や走行不能なスタック車両の移動で、通行止めによる渋滞を起こさないようにするが、同事務所の藤原康史副所長は「通行止めの解除に時間がかかりそうで、ドライバーにニーズがある」と分析。「もし同じようなことが起きれば、また活用したい」と話す。
山陰両県に四つある国道事務所によると、同様の対応をしたケースはないとみられるが、今回のケースを踏まえ、具体策を検討する動きも出ている。
車載式の仮設トイレは普段、工事現場などで活躍する。鳥取道などを管理する鳥取河川国道事務所は、立ち往生が発生した際に、工事に使う仮設トイレを活用できる。
移動できるトイレの導入について、倉吉河川国道事務所道路管理課の岡本勝彦課長は、勾配のあるカーブなど車が止まりやすい場所に向かえる態勢の必要性を示し「前向きに考えたい」と話した。(曽田元気)