大相撲の人気力士、遠藤は能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県穴水町出身。初場所の取組を避難所から懸命に応援する地元被災者の姿をテレビのニュースが伝えていた▼少年相撲教室の児童は待望の白星に喜びを爆発させるでもなく、「ほっとした」と一言。理由を問われ「遠藤が勝ったらお年寄りが喜ぶから」と。膝の故障の影響もあって負けが重なる苦しい土俵が続き、がっくりと気落ちする様子を身近で多く目にしたのだろう。子どもは大人をよく見ている▼こちらは頼もしく映る大人たちの姿に違いない。被災地で一般ボランティアの活動が始まった。自分では動かせない災害ごみの片付けが進み、高齢者らはさぞありがたく、ほっとしていることだろう▼とはいえ、現地の宿泊や道路事情で、ボランティアの登録者は大勢いるのに1日に活動できる人数は限られるという。つい先日は最大震度4の大きな揺れが再び被災地を襲い、片付けの作業中に避難を強いられる場面もあった。復旧が思うように進まない、もどかしさがあろう▼初場所後、故郷の避難所を慰問した遠藤は被災者に語りかけていた。「時間がかかるとは思いますが、必ず元の日常に戻る日が来ると信じています。僕も土俵で頑張るので皆さん一緒に頑張りましょう」。順調に白星を積み重ねるに越したことはないが、土をつけられながらも立ち上がる姿を見たいときもある。(史)