「有言実行」というが、夢を言葉にすれば実際にかなうことがある。達成しようと人一倍努力するからだ。その最たる例が大相撲春場所で110年ぶりの新入幕優勝を成し遂げた鳥取城北高出身の尊富士。〝荒れる春場所〟の主役になった▼十両優勝を決めた1月の初場所千秋楽、高校の先輩で幕内優勝した横綱・照ノ富士の指名を受け、旗手として優勝パレードのオープンカーに乗り込んだ。「自分もいつか、この最高の景色を見てみたい」。わずか2カ月後にその夢がかなうなんて、本人も思っていなかったに違いない▼本名は石岡弥(み)輝(き)也(や)。青森出身で幼い頃に相撲を始め、中学卒業後に遠く離れた鳥取へ相撲留学した。実力は十分ながら、2年時に左膝の靱帯(じんたい)を断裂する大けがを負い、日大でも2年時に右膝を負傷。アマチュアで実績が残せず前相撲からスタートした反骨心と、膝への負担を減らすため磨いた速攻が快進撃につながっている▼だが、またもやけがに見舞われた。初日から11連勝を飾り、勝てば優勝の14日目の取組に敗れて右足を負傷。車いすで引き揚げる姿に千秋楽の出場も危ぶまれたが、見事に逆境をはね返した▼高校の後輩である北青鵬の暴力問題を引きずった中で迎えた今場所。途中休場した兄弟子・照ノ富士に代わって土俵を盛り上げ、優勝パレードの主役の座に就いた24歳は、この先どんな夢を口にし、実現させるのだろう。(健)