アルテ・オハラの主宰小原万葉さん
アルテ・オハラの主宰小原万葉さん

 松江市中心部にアートスペース「アルテ・オハラ」が誕生した。築49年の古民家を活用したギャラリーで、主宰はフラメンコ講師でもある小原万葉(こばら・かずは)さん(45)。松江で芸術を開拓しようと腐心する小原さんに思いを聞いた。

■芸術一家に育ち、Iターン

 小原さんは横浜市出身で、武蔵野美術大を卒業後、スペインに3年間留学。2012年に結婚を機に松江市にIターンした。母親はギャラリーを経営し、彫刻家の父、高須英輔さんは雲南市や松江市内で個展を開くなど島根と関係がある。

 芸術一家で育った小原さんは、島根に来たとき「芸術に触れる場面が少ない」のが残念だった。

  子育てが一段落し、昨年12月、2階建て古民家1階の3部屋(広さ100平方メートル)を改装し「アルテ・オハラ」を構えた。アルテはスペイン語で「芸術」、オハラは「強く願う」を指す。3部屋の一室を普段はフラメンコ教室のレッスン場として使い、展示期間中はギャラリーとして活用する。

鏡張りのレッスン室での展示

■「島根にギャラリーの需要はある」

 ギャラリー開設を考える中で、一畑百貨店(松江市朝日町)閉店のニュースが入った。アート作品を展示販売してきた美術サロンがなくなり、地元作家の活動の場が宙に浮いた。

 「島根にギャラリーの需要はある。やるならば、島根の中心でやらないと意味がない」と県庁近くの松江市母衣町を選んだ。単なる場所貸しではなく、企画運営にも力を入れて県内外からアーティストを呼ぶ。気に入った作品は購入できる仕掛けだ。

和室を生かした展示=松江市母衣町、アルテ・オハラ

 これまで2回、展示を企画したが、ふと来場した客が作品に感動して作品を求めたり、「こんな場所がほしかった」と声をかけてくれたりする人がいた。

 「美術館のように鑑賞するだけではなく、もっと気軽な芸術の出会いが島根でも増えればいい」と願う。

■今後はアートフェスにも挑戦

 2月16~22日は県内を中心に活動する写真家高嶋敏展さん(51)の作品展を開いた。和室の趣を生かして写真を配置し、空間全体を一つのアートに見立てた。高嶋さんは「作家にとって企画運営をしてくれるギャラリーは本当にありがたい。本分である創作活動に集中できる」と喜ぶ。

作品と写る小原万葉さん(左)と高嶋敏展さん

 小原さんは「松江の中心から芸術を発信し、まずは地元の人に芸術をもっと身近に感じてほしい」と語る。今後、松江城周辺の空き家などを活用したアートフェスにも挑戦したいという。

 次回は4月19日から25日まで、松江市内で活動する版画作家、浅井菜保子さんの作品を展示する。

(報道部・林李奈)

 <アルテ・オハラ>
 松江市母衣町177
 電話0852(67)7388