東京大の牧原出教授
東京大の牧原出教授

 島根1区を含む衆院3補選(4月16日告示、28日投開票)が迫ってきた。最大の争点に浮上する「政治とカネ」の問題を巡り、どう対応すべきなのか。有識者や国会議員に聞いた。
 

 ―自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に国民が不信感を募らせている。

 「インボイス(適格請求書)制度の導入だけでなく、消費税10%が背景にある。国民負担が重くなり、公金への国民の目は厳しさを増している。今後負担が減ることはなく、少子高齢化でむしろ増える。『政治とカネ』の問題をきちんと処理しないと政治が国民に負担を求められなくなる。政治資金規正法は国民目線に沿い、しっかりとガラス張りにしないといけない」

 ―再発防止に向け、罰則の強化は必要か。

 「一定の罰則強化は必要だ。議員個人が不正した場合は刑事罰で良い。ただ、党のガバナンスが問題の今回は経済罰で罰金を支払う方が良い。政党交付金の返還や削減を求める手もある。裏金分を没収する方が分かりやすい。お金の問題はお金でけりをつける。対応の早さが求められており、今のように何も決められないのが一番良くない」

 ―監査機能を充実するため、第三者機関の設置が必要との意見がある。

 「経済罰の罰金を誰が決めるのかというと、第三者機関が裁定すればいい。現在はそこまで権限がない政治資金適正化委員会があり、機能を強化することで早い処理が可能になる。第三者機関の効果が不透明との意見もあるが、つくって育てていくしかない。どうつくるのかを議論する方が生産的だ」

 ―議員も連帯責任を負う「連座制」導入が焦点になっている。

 「連座制は会計責任者に事情聴取した途端に議員が首なのかと皆が思ってしまう。検察を萎縮する効果を生み、捜査しなくなる。逆効果だ。必ずしも適切ではない」

 ―使途を明らかにする必要がない政策活動費の取り扱いも課題だ。

 「全て領収書をつけないと駄目だ。ただ、使途の公開範囲を第三者機関が決めるやり方はある。問題になれば第三者機関が全てを知っているという透明性や見られている緊張感が生まれる」

 ―政治資金パーティー券売買の実態が不透明だ。

 「各党が政治資金をどう集めるべきかという問題として、もう一度在り方を議論すべきだ。パーティーはたたき上げの議員のお金の集め方の一つだ。形だけのパーティーや寄付、オンライン開催などを整理し、定義をしっかり決めないといけない。脱法的なものは全て駄目だ」
 

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 まきはら・いずる 愛知県出身。東京大法学部卒。東北大大学院法学研究科教授などを経て、2013年から現職。専門は政治学・行政学。主な著書に「内閣政治と『大蔵省支配』」。「日本政治史講義 通史と対話」など東大名誉教授の御厨貴氏との共著も多数ある。56歳。