鳥取商工会議所の副会頭に29日、山陰合同銀行の石丸文男会長が就任した。前頭取で、代表権を持つ会長が松江市の本店を離れて鳥取駐在となること自体異例。しかも鳥取経済界の公職に就くことに、地元の金融業界や企業経営者から高い関心が寄せられている。
「いろいろな方と力を合わせてやっていくのが、私の強み。人脈を駆使し、いろいろな考えを聞きながら、鳥取東部で何ができ、何を目指すのか。できるだけ早く把握し、提言していきたい」。石丸氏は同日の就任記者会見でこう述べ、経済の活性化やまちづくりに意欲を示した。
鳥取市気高町出身で、鳥取県出身者として初めて同行頭取を務めた。このたび会長職のまま鳥取駐在が決まり、2013年6月まで務めた専務執行役員(鳥取営業本部長)時代以来8年ぶりの「里帰り」となった。
鳥取商議所の児嶋祥悟会頭は「(山陰合同銀行は)関西や山陽とのパイプが強い。都市部の企業や人、技術を鳥取に呼び込んでほしい」と手腕に期待する。
そもそも副会頭は、児嶋会頭が就いた19年11月の体制刷新に伴い、鳥取市に本店を置く鳥取銀行と入れ替わる形で山陰合同銀行がポストを得た。そこに会長の石丸氏が就くことで同行の存在感が一段と高まり、「鳥取銀行にとって脅威になる」(金融幹部)との見方もある。
民間調査会社・帝国データバンク鳥取支店の20年メインバンク実態調査によると、鳥取県内シェアのトップは山陰合同銀で48・64%。2位の鳥取銀は25・65%で約2倍の差があり、ここ10年間、両行のシェアはほとんど変わらず平行線をたどっている。
地銀を巡っては20年11月に独占禁止法の特例法が施行されたこともあり、全国的に経営統合など再編の動きが相次ぐ。石丸氏の鳥取駐在、副会頭就任を機に「両行の生存競争が加速するかもしれない」(企業幹部)との声もあり、経済界が注視している。 (福間崇広)