中国共産党は1日、創建100年を迎えた。習近平総書記(国家主席)は一連の祝賀行事を通じて共産党政権の正統性と自らの権威を誇示し、国民と国際社会に対して米国に比肩する中国の台頭をアピールした。

 しかし、貿易摩擦や中国の人権、海洋進出などの問題で米中対立は激化し、米主導で自由主義陣営の対中けん制は強まる。国内では少子高齢化や貧富の格差、地方政府や企業の債務拡大などを抱え、前途は多難だ。

 中国は10年前後で米国を抜き、世界一の経済大国になる見通しだ。中国が新興大国として国際社会の信任を得たいなら経済だけでなく、国際協調と政治の民主化に力を注ぐべきだ。

 習氏は祝賀大会の演説で、党創建100年までの目標だった貧困脱却による「小康社会」(いくらかゆとりのある社会)の全面的な達成を宣言。2049年の建国100年までに「近代的社会主義強国」を築き「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を実現する次の課題を掲げた。

 外交・安全保障の面で「平和や発展、公平、民主、自由は全人類共通の価値」と柔軟さを示しながら、人権批判については「有益な提案や善意の批判は歓迎するが、偉そうな説教は絶対に受け入れない」と一蹴した。

 また「人類運命共同体」の構築を訴え、平和を支持して覇権を求めない立場を強調したが、一方で軍を近代化して「世界一流の軍隊」を持つことにも意欲を示す。

 香港問題では「中央の管制統治権、国家安全維持の法律を実施し、国家の主権、安全、発展の利益、香港の繁栄と安定を守る」と言明し、1年前に施行した香港国家安全維持法に基づく統制強化を主張した。

 このように習氏は美辞麗句を織り交ぜながら、自らの強硬な対外戦略や人権弾圧を正当化した。これでは国際社会の理解は得られず、中国の孤立化は進むだろう。

 習氏は来年の党大会で異例の総書記3選を果たし、最高指導者の地位にとどまる構えだが、習氏1強に不満もくすぶる。

 毛沢東は建国直後に「四方への出撃をしてはならない。多くの敵をつくってはならない」と戒めた。ある知識人はこの言葉を引用し、米欧など自由主義陣営の多数を敵に回した習氏の外交失策を暗に批判した。

 習氏は対外宣伝の強化によって「信頼され、愛され、尊敬される中国イメージ」の構築を指示したが、人権弾圧などでイメージは悪くなる一方だ。高圧的な「戦狼(ろう)外交」も改めるべきだろう。

 日本は中国とどう付き合っていくか、戦略を練り直す時に来ている。同盟国米国との連携は大事だが、中国と東シナ海を挟んで隣り合い、長い交流の歴史を持つ日本は独自の対応が必要だ。

 来年は日中国交正常化50年を迎える。平和共存をうたった平和友好条約を関係の基礎としつつ、中国の強大化の中で、尖閣諸島の領有を巡る対立や台湾有事の際にどう対応するか。密接な経済貿易関係の互恵を保ちながら重要物資の調達を確保するための経済安全保障にどう取り組むか。問題は山積している。

 外務、防衛、国土交通、経済産業などの関係部門が連携する枠組みをつくり、有識者や企業の意見も聞きながら、時代の変化に即した対中戦略を再構築していくことが急務だ。