移転から1年を迎えた文化庁京都庁舎=3月27日、京都市
移転から1年を迎えた文化庁京都庁舎=3月27日、京都市

 2年前の話。実家からコメを送ったと電話を受けた。ところが予定日を過ぎても届かない。最寄りの宅配業者に連絡すると慌てて配達に来たが、米袋には破れた痕跡が。その説明もないので、「なぜ袋が破れているのか」と声を荒らげてしまった▼こうした行為も威嚇と受け取られてしまうのだろうか。顧客が従業員に威圧的な言動や理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化し、厚生労働省が、従業員の保護策を企業に義務付ける検討に入った▼各種の実態調査を見ると、カスハラは暴言や執拗(しつよう)なクレームが多いようだ。商品やサービスに対する苦情や改善点の指摘は時に必要だが、度を越すと言葉の暴力になりかねない。2年前の苦情は相手に改善を求めるつもりで言ったのだが、もう少し丁寧な言葉での対応が必要だったと反省している▼文化庁が行った2022年度の「国語に関する世論調査」では、言葉の使い方に「気を使っている」とした回答が約8割を占めた。過去の結果を見ても増加傾向。時代とともに、言葉への意識は高まっているようだ。その半面、インターネットの世界では匿名性の中で誹謗(ひぼう)中傷が絶えない▼きょう5月18日は、語呂合わせで「こ(5)と(10)ば(8)の日」。手話や点字などを含めた「ことば」を大切にする日として5年前に認定された。言葉は薬にも刃(やいば)にもなる。もう一度、心に刻みたい。(彦)