パリ五輪・パラリンピックの健闘を誓い、握手を交わす森卓也選手(左)と古田直輝選手=米子市西町、鳥取県立米子艇庫
パリ五輪・パラリンピックの健闘を誓い、握手を交わす森卓也選手(左)と古田直輝選手=米子市西町、鳥取県立米子艇庫

 今夏のパリ五輪・パラリンピックの足音が近づく。ローイング(ボート)で初出場を決めた古田直輝選手(27)=NTT東日本=と森卓也選手(49)=CHAXパラアスリートチーム=が今月初め、地元報告で米子市内の艇庫をそろって訪問。固く握手を交わした。

 「意外と柔らかい」と車いすから見上げる森選手。笑顔で握り返す古田選手。穏やかな空気に忘れそうになった。ここに至るまで波の穏やかな日ばかりではなかったことを。

 米子工高時代に「高校3冠」を達成。その後も実績を重ねた古田選手は、パリと同種目の軽量級ダブルスカル男子で、東京五輪アジア・オセアニア予選でも1位になりながら他種目の日本勢との比較で涙をのんだ。あれから3年。「大人として成熟し、どんな環境でも集中できるようになった」

 男子シングルスカルの森選手は障害者陸上投てき2種目の日本記録保持者。右肩のけがで一度は絶たれたパラ出場の夢を、3年前に始めたボートでかなえた。「苦しいこと、つらいことがあっても、何か続けていればいいことがある」

 艇庫前の「錦海」育ちの選手としてはリオデジャネイロ、東京の冨田千愛(ちあき)選手に続く五輪で、今回はパラも同時出場という快挙だ。戦後は子どもたちの水泳場だった水辺ですくった水はまだ冷たかった。水がぬるむ頃、大舞台に立つ2人。不屈の精神は、その背を追う後輩たちに受け継がれていく。(吉)