衆院3補選の選挙戦最終日に島根1区に入り、手を振る自民党総裁の岸田文雄首相(手前左)=4月27日、松江市
衆院3補選の選挙戦最終日に島根1区に入り、手を振る自民党総裁の岸田文雄首相(手前左)=4月27日、松江市

 4月の衆院島根1区補選にデスクとして関わり、自民党が負ける姿を初めて見た。衝撃は今も残り、報道各社の政治関連の記事で「島根1区補選」の文字が度々登場する▼予兆は保守分裂となった5年前の島根県知事選にあったと思う。自民が長年政権を担いながらも、東京一極集中と地方の疲弊が加速。不満と将来に危機感を抱いた県議が国会議員に反旗を翻した▼補選では派閥の政治資金パーティー裏金事件が追い打ちをかけた。支持者は「保守王国は過去のこと。政治とカネの問題で恥ずかしい気持ちでいっぱいだ」と怒った。島根入りした党総裁の岸田文雄首相は「改革を思い切って進める」と誓ったが、反発は強く大差で負けた▼補選の結果を受け、自民はどう変わるのか。注目していたが、国民の怒りは届いていないようだ。今国会で最大の焦点になっている政治資金規正法の改正案を巡り、自民は微調整を小出しにして企業・団体献金や政策活動費は温存する内容にとどまる。抜本改革にはほど遠く、不正を生む抜け道があるにもかかわらず、公明党などが賛成に回り、数の力で押し切る見通しだ▼課題が多いほど、政治の役割は増す。日本全体で人口減少が進む中、どのような国をつくるのか。政治とカネの問題に決着をつけられない今の政治に、未来を描き、対策を打てるとは到底思えない。民意から離れて久しい政(まつりごと)は正念場を迎えている。(添)