神崎神社拝殿向拝の天井に彫られた全長16メートルの龍=5月9日、鳥取県琴浦町赤碕
神崎神社拝殿向拝の天井に彫られた全長16メートルの龍=5月9日、鳥取県琴浦町赤碕

 いつもと変わらぬ場所なのに特別な意義が加わると、価値が何倍にもアップするから不思議だ。先月、鳥取県琴浦町赤碕にある神崎神社に足を運んだ。県内外から観光バスでやって来る団体客らでにぎわっていると聞いたからだ▼見どころは建物の随所に施された見事な彫刻。中でも注目を集めているのが拝殿向拝の天井に彫られた全長16メートルの龍で、長さは日本一という。だが、いずれも江戸から明治期に施されたもの。なぜ今、注目の的?▼理由は鳥取県の観光プロモーション。辰(たつ)年にちなみ、県内に龍にまつわるパワースポットが多いことから「とっとリュウ県」と〝改名〟して売り込んでいる。日野郡の辺りを顔に、県の地形を龍の形に見立ててPR。だが、胴体が短い。東西に長い島根県の方が龍に近いと思うが▼今年の折り返しを控えた6月に「いまさら龍の話」と笑われそうだが、「いまから龍」なのである。こちらの〝龍〟は7月26日に開幕するパリ五輪の日本代表に決まった陸上男子3000メートル障害の三浦龍司選手(22)。小中学生時代に陸上教室で練習を重ねた地元・浜田市の陸上競技場に、お祝いの横断幕が設置された。いつもと変わらぬ場所ながら、後輩の練習は熱が入るだろう▼ちなみに三浦選手は辰年生まれの年男かと思いきや、午(うま)年生まれ。昇り龍より、水濠(すいごう)やハードルを颯爽(さっそう)と跳び越えてゴールへ駆ける姿が似合う。(健)

パリ五輪出場を決めた三浦龍司選手に横断幕を掲げ声援を送る浜田ジュニア陸上教室の生徒ら=5月25日、浜田市黒川町の市陸上競技場