自民党が3度修正した政治資金規正法改正案を可決した衆院本会議=6日午後
自民党が3度修正した政治資金規正法改正案を可決した衆院本会議=6日午後

 わずか2カ月足らずで議論が深まるはずがない。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正案の審議は、抜本的な改革には程遠く、具体的な制度設計は法成立後に先送りされそうだ。

 企業・団体献金やパーティー開催の禁止を巡って与野党の溝が埋まらない中、前提となる政治資金の集め方に関する議論は抜け落ちたままだ。改正案が衆院を通過し、山陰両県の国会議員に取材した際も「議論が不十分」との声が相次いだ。

 自民党の高見康裕衆院議員(島根2区)は「何にどれだけお金がかかるかを、ちゃんと発信しなければいけなかった。それが議論の大前提だ」と主張。4千平方キロ超の広大な自身の選挙区内に事務所が三つあって維持費がかさみ、東京を含めた秘書7人のうち4人の人件費も自前で賄う。小まめに有権者の声を聞くため、簡単には人員を削減できないという。

 法定上限があるとはいえ、選挙運動費用の確保も必要。選挙区の面積や有権者数が議員で異なる中、地域事情に応じて事務所数や秘書の人数はどの程度が適正なのか。さらにお金がかからない仕組みはつくれないか。議論は尽くされていない。

 1994年の政治改革関連法案の成立後、政党交付金との「二重取り」批判はあるものの、企業・団体献金はピーク時の9分の1に減った。信頼回復に向け、政治にお金がかかるかどうか改めて検証が必要だ。(吏)