「女性初の〇〇〇」。山陰合同銀行(松江市魚町)の行員としてキャリアを積めば積むほど、決まり文句のように言われるようになった枕ことばだ。社会全体で女性活躍が叫ばれる一方、「ことさらに女性を強調したいわけではない。一人の人間として仕事をしてきただけ」との思いがあった。
 

周囲を気にして守りに

 「本当に私でいいのかな」

 2015年、山陰合同銀行で2人目の女性支店長として古志原支店長に就任した吉岡佐和子(57)は見えない壁と戦っていた。

 「支店長になりたい行員はたくさんいるのに、なぜ吉岡なんだ?」。そう言われているようでならなかった。

 無意識のうち、「あまり目立たないように」していた。周囲の目を気にして守りに入ってしまっていた。支店の成績は最低ランクの評価だった。

取引先と経営課題を話し合う吉岡佐和子=鳥取市内

 この状況を変えてくれたのが、松江市内の取引先の経営者だった。思い切って悩みを打ち明けると、「偉くなりたくて支店長をやっているの?お客さまにとって良いことを思い切ってやればいい」との言葉をもらった。

 迷いが吹っ切れた。...